当店ではチップ文化を採用しています。

もともと、当店にはチップ文化はなかったのです。

きっかけは、
食べログのとあるスーパーユーザーのお客様からのある口コミにより、チップ文化を取り入れることにしました。

まず、
前提として日本ではチップ文化がありません。それにも変わらず日本のおもてなしの心(サービス精神)は、世界基準で見ても群を抜いて高いです。

その文化に身を置く私(店主の若井)としましても、いかなる業種職種においても、サービスと言うものは「無料」で「当然」についてきて当たり前と言うことを考えていました。

一方、
1度でも海外のチップ文化に触れたことがある方はお分かりになると思いますが、1つ1つのサービスにチップが発生するようになっています。

これにより、とくにサービス業と飲食業の従業員の方は、活き活きと素敵な笑顔とサービスを提供してくれます。そして、その対価として、私たちは総額の1~5%のチップを払うことをマナーとしています。

実際はマナーであるため、守らなくても違法ではないですし、誰からも後ろ指を指されることもありません。

前提が長くなり申し訳ありません。ここからが本題です。

ではなぜ、食べログの方がきっかけになったかのかと言うと、この方は食べログで予約をして、食べた後につける評点に自分で決めたルールがあります(レビューでその内容記載がありました)。

ルールというのは、味が普通であり、かつ、サービスが普通である場合は「3.2」をつけるとのことでした。

その方が当店の角煮を召し上がり、そしてレビューを書いていただきました。

結論、
・当店の角煮は味は普通。
・サービスが悪い※
納得がいかないことがあるが、改善の余地はあり、改善方法や何をすれば納得がいくと言うとこも書いていただいています。大変ありがたいレビューです。

ここで私が思ったのは、口コミ(レビュー)と言う分野においては、

サービスとはラグジュアリー・優良・優秀なホテルやレストランではない限り、減算方式となる可能性が高い

ということです。

わかりやすくいうと、

ポピュラーな店は、日本の社会通念上サービスが100点満点で行われて初めて「普通」

ということです。

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具体例をあげます。
当店にマレーシアの方が来店した時の話です。煮卵が苦手らしく、通常に茹でた卵が欲しいということでした。その時たまたま、卵の追加仕込みをしていたため1つだけ眺めに茹でて別皿に添えて提供しました。すると、

「このサービスはいつもいくらで提供していますか?」と英語で聞かれたため、
「無料です」と答えました。

「本当に?それは申し訳ないからチップです」と言って、1700円のお会計で、2000円を預かり、お釣りは不要で300円いただきました。

タイミングも良かったのが前提としてありますが、日本では恐らく「普通」に無料サービスの範囲です。場合によってはお断りされるかもしれません。
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上記でも例があるように、普通に質の高いサービスにおいて、加点もなければ課金もありません。
そのため、多くが、味1本で勝負をするか、過度(日本人でも驚くような)サービスをしないと、口コミの内容が加点されないということになります。

それでは、飲食業界で働いている従業員は、サービスと言う名の枷(できて当たり前)をつけられることになります。

結果、その枷をつけられた状態で、一般的な飲食店の従業はが一流のサービスをしたとしても、
レビューで褒めてもらえるだけで、その従業員の収入には直接反映されないため長くサービス精神が続かず疲弊をすることになります。

では、努力を続けて、レビューを積み重ね有名店になり、口コミが広がり集客が時間をかけてうまくいくようになり、売上げが増加し、そこから給料へ反映させれば良いと言う意見があるかと思いますが、それはいつの話なのかという事です。

前述しただけでもかなり長い道のりです。飲食店の廃業率は高く、シャッター廃業※も含めて1年で半分以上なくなると言われています。
※倒産はしていないが、店を閉めている状態で実質営業をしていない

また、近年、急速に、原材料の高騰や水道、光熱費、配送、運搬コスト、株価の上昇に伴う不動産価格の上昇における更新時の家賃増額。加えて、人件費の最低賃金上昇、健康保険料の増額などがあり、企業努力では賃金ベースのアップが追いつきません。

つまり、従業員には

「給料は上げれないし、どんどん経営環境は悪くなりますが、ひたすら笑顔を続けなさい。なぜならこれは接客業であり、お客様は(本来は)高い水準であるサービスを普通と捉えているため気合と根性で接客しましょう」

と指示をしなければならないのです。

そこで店では、

従業員の努力が即時収入に反映されるために、チップ文化を設けました。

制度(ルール)にしてしまうと、違反すると虐げられることになってしまうため、制度ではなく、あくまで文化(マナー)と言う位置づけにしています。

そのため、当店スタッフがお客様へ気持ち良いサービスをした場合には、ぜひお心ばかりのチップをいただけますと幸いです。

こういったサービスがあまりない世の中ですが、店主の私としては、豚の角煮のお店を100年続け後世に残していきたいと考えています。そのためには、皆様のお力添えがなんとしても必要になってきますので、ご理解ご了承のほどよろしくお願いします。

(私はこのお店を好きで経営しているため、私へのチップは不要です。そのため、レビューで「美味しかったよ、ありがとう。」をチップとしていただけますと幸いです。)

角煮丼屋くろしろ
店主 若井